Blog (Japanese)

Monday, October 24th, 2011

どうやって問題を解くか: 広告の中の音楽 -前書き-

(これはHow to Solve it: Music in Advertising -Introduction- の日本語版です)

前提として

“How to Solve it/them”(どうやってその/それらの問題を解くか)。私が広告の音楽を手掛ける際に、最も気をつけているのはこれである。もちろん音楽が広告でのマーケティング課題の解決に貢献できる範囲は限られているし、ただ映像のイメージもしくは直近のディレクターの指示にフィットするものを作れば(選べば)それでやり過ごせる場合もあるだろう。しかし、広告がチームで達成する総合表現の一つであり、「マーケティング課題の解決」を第一目的として存在している以上、ただ「ディレクターの意向に沿うように音を作りました」では、本来的な意味では、任された仕事の半分もしていないように思われる。

さらに言えば、現実的な課題はマーケティング課題=クライアントと消費者/顧客の関係だけではない。音楽を担当している人間の立場からから見ると一つの広告に付随する課題は、現実的には以下の様なものがあると考えられる。
(留意事項:これは広告に楽曲をライセンス使用する場合ではなくカスタムプロダクションの場合。またここでいう「クライアント」は最終決定権を持つスポンサー/広告主のことであって、直近の代理店やディレクターではない。)

様々な課題レベル

課題レベル-1: 消費者の持つ潜在的な課題(でかつ、クライアントが自らの商品やサービスで解決出来る可能性があるもの)

課題レベル-2: レベル-1の課題解決に取り組むにあたり、クライアント自身が内部・外部に抱える課題
- ブランド、シェア、競合、流通の様なマーケティング的課題から、生産・経営資源、株主(IR)などの経営上の課題

課題レベル-3: プロジェクトチーム(クライアント、代理店、制作チームを含め)が抱える課題
- クライアントとの関係、チーム編成、プロジェクトの予算とスケジュール、キーパーソン、出演者及びその事務所などを含むチーム内外関係者間の政治力学、広告賞やタイアップなど付随的な狙い

課題レベル-4: 制作チームが抱える課題
- 制作予算とスケジュール、制作プロセス/手法(先に映像が出来上がっているか、その逆か、もしくは並行作業か)、オンエア時期/シーズン、レコーディングスタイル(スタジオレコーディング、外部ミュージシャン/オーケストラの必要性など)

当然ながら、最終的なゴールは課題レベル-1に対する解決法を生み出し提示することである。その前の過程として全てのレベルの課題を注視し、その一部に焦点を当て、それぞれの役割と課題が協調しあうような形で自分の責務をこなしていく必要がある。自分がこれまでに関わったプロジェクトで毎回それが達成出来ているかどうかは、自分は判断を下せる立場にない以上(判断をするのは消費者である)100%そうであるとは言い切れないし、自分がどれだけそのプロジェクトに深く関われるかという点も状況により千差万別である。しかしながら、どんなプロジェクトであろうと少なくとも上の点を常に意識して事に当たらなければならないことに変わりはない。

課題意識を怠った場合

巷の広告を見ていると、課題レベル-3を解消しただけで課題レベル-1にまで全く達成できていないもの(例えばアーティスティックな「クリエイティブ」作品や「ヴァイラル(口コミ効果で爆発的に広がった)」な作品であっても、クライアントの本質的なマーケティング解決に到達していないもの。クライアントの予算が潤沢な場合は除く)、もしくはクライアントの持つ課題レベル-2の分析が出来ていないもの、さらには(ただの商品や企業の自慢に終わり)消費者に語りかけていないものなど、様々な歓迎し難い作品に出会う事があるだろう。音楽的な観点で見ると、音楽とその他の要素がメッセージの伝達に上手く作用していない、もしくはそれぞれの要素の効果を打ち消しあっている作品に出くわすこともよくある。これはディレクターの見当違いな意見やこだわり(いわゆる「Temp Love」(仮にあてがった既存の有名曲の印象に引っ張られて、そこから離れられないこと)に抵抗しきれなかったり、作曲家自身が直近のディレクターの指示以外注意を払わなかったりしたためかもしれない。それでは目の前の譜面を必死に追うあまり指揮者や他の演奏者が何をしているのか気にかけない演奏者や、アシスタントディレクターの気紛れに翻弄される俳優のようなものである。

常に確認する

自分がやっていることが正しいかどうか分からなくなったら、プロジェクトの中の相応しい人物に聞いて確認すべきだし、自分と他のメンバーがコアとなる課題を十分に共有できているかについても納得行くまで確認もしく議論した方が良い。早い段階もしくは迅速に何らかのアクションを取ることで正しい方向に進む事が出来るようになるはず。そのようなとっ散らかった状況では、余程の有能なプロジェクトリーダーが責任を持って直ちに全てが正常に動くように働きかけでもしない限り、その広告作品を消費者に共鳴するようなものにすることは難しいだろう。(幸い自分がこういった厄介なケースに巻き込まれることは、この何年もの間殆どないけれども)

いかなる場合においても、自分に課された役割に専念する前にプロジェクト周辺のあらゆる課題に対して自覚的になることが非常に重要である。なぜならあなたも同じゴールに向かって前に進む運命共同体の一員であることに変わりはないのだから。

次回からは自分がどうやってこの”How to Solve it/them”に取り組んできているかについて、具体的な例を挙げつつ詳しく説明していきたい。

Posted by Tatsuya Oe

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